4 自然体とヨガ

 ヨガ行法の起源は遠く、ドラビタ人を中心とした種々の土着民族が築いたインド古代文明にまで遡ることができます。
 今から四千年もの昔、西北インドインダス川流域に、インダス文明が栄えました。
 インダス文明の誕生は、紀元前三千年ころであり、紀元前二千年ころに絶頂期を迎え、紀元前一千年ころに滅んだと言われています。
 そのインダス文明を伝える印章と護符が、ハラッパーやモヘンジョダロなどの遺跡から発見されています。
 印章や護符には、動物や英雄、神などが彫られているのですが、その中には、ヨガの座法をした神の姿が残されています。
 一方、紀元前五千年のヴェーダウパニシャッドを通じて、ヒマラヤに生まれたヨガのことがわかります。
 自然とともに生き、その自然を創った神を畏敬していた古代人にとって、神への祈りはごく日常的なあたりまえの日課だったようです。
 その神への祈り自体、一種のヨガ行法で、古代人は、そこからさらに自己との対話や、安らかな精神統一へと入っていったのです。
 自然は、実に複雑な様相を呈しますが、いくつかの単純な原理で成り立っています。
 ヨガは、その自然を成り立たせている根本の原理を受け入れるところからはじまっているのです。
 ヨガが、今日まであらゆる健康法の中で、信頼を受けてきたのは、その起源が古いからだけではありません。
 古い時代に考案されたものでありながら、現代医学や精神学、各種の身体学が舌を巻くほどに、高度で科学的な認識に達していたからです。
 ヨガは哲学ですが、観念的な哲学ではありません。
 きわめて実践的で合理的な心とからだを知り尽くす生命の哲学であり、臨床的で実証的な人生の哲学なのです。
 たとえば、「心とからだの自然な結びつきが崩れると、心が乱れ、からだが乱れる」ということを西洋の哲学のように理解したならば、これは論理的に当然だということになります。
 しかし、ヨガではこれを一つの論理として、頭で理解するということにとどまらずに病にかかった本人が、自分の心とからだを通して、疾病の本当の原因を深く認識するのです。

引用:瞑想でキレイになる